埋設ユーティリティの位置調査において、地中レーダはEM探査の補完手段となっています。
EM探査と異なり、個々のユーティリティが磁場を発生している場所について、地中レーダは周囲と異なる地中の特徴を可視化するもので、その結果多くのターゲットが発見されることがあります。
この記事ではユーティリティ調査における、よくある、しかし解析困難な2つのケースのデータを用いて、取得したデータを最大限に生かす方法をご紹介します。
1. ターゲットが多い
地中におおくの埋設物が表示された場合、深度ごと、方向ごとで区別したり、岩や木の根などの他の対象物とユーティリティを区別するなどの方法で対処することができます。図1は多くのターゲットが複雑に現れている断面図の例です。
図1いくつものターゲットが多くの双曲線を作り出し解釈困難なデータとなっている。
2. 弱い反応
数種類の構成物で形成されるターゲット、深度によって異なる土質状態にある場合などは、地中レーダの反射振幅に非常に大きな影響を与えます。その結果、調査目標の埋設ユーティリティを示す反応が、断面イメージの中でもっとも際立っている強い反応とは限らないということが起きます。非金属のパイプや配管は弱い反応として現れることがあります。
これはそれらを構成する物質が周囲の土壌の性質に対してわずかな差しか示さないからです。
図2のように目的の対象物からの反応が弱い場合、見落とされることが多々あります。
このようなケース、あるいはこのようなケースがいくつも重なったケースでもデータを最大限に活用するための手法をいくつか見ていきましょう。
図2 強い反応だけに注目していると、深い場所に埋設されている
ユーティリティからの弱い反応(赤線の囲み部分)が見落とされがちになる。
解釈とマップビュー
ユーティリティの位置調査の際、施工計画時の設計図等があればあらかじめその現場の状況を予測することができます。さらに通常、現場を撤収する前に、観察された特徴やターゲットのサイトマップを作成する必要があります。MapViewは実際の現場と同じ形状で探査データを表示することができます。このためには、データ収集の間、スクリーンをタッチしてカラードットをすべての反応(すべての双曲線)の頂上部分につけておきます(図3)。この最初の段階では、区別することなく、可能性のあるターゲットすべてにカラードットをマークします。この時注意すべきことは、データ収集の測線パターン、方向、間隔等がすべての探査エリアを正確にカバーできているかを確認することです。
データ収集中「MapView」を選択することで、探査エリア全体とそこに付与した全てのカラードットが画面上でいつでも確認できます。
埋設ユーティリティは通常長い線状の特徴を示すので、MapView画面で線状に並んだカラードットがあるか確認することは、探査エリアの土質による反応と、ユーティリティからの反応を区別する有効な手段です。
図3では、もっとも深い反応にピンク、中間部分の反応にブルー、浅い部分の反応に黄色のドットをマークしました。これをMapView画面で見ると、ブルーとピンクは明らかな線状を形成し、これらが埋設ユーティリティであると推測できます(図4)。黄色の反応は単発的に現れています。
図3 データ収集中にスクリーン上にカラードットをマークする。
(ピンク-深い場所の反応、ブルー-中間の反応、黄色-浅い場所の反応)
図4 MapView画面に表示された線状のユーティリティ(ブルーとピンク)と単発のターゲット(黄色)
深度スライス
深度スライスはシグナル振幅に基づいて、あらゆる深度ごとのGPRデータを2Dでイメージ表示したものです。一か所に多くのユーティリティが埋設されている場合、深度スライスはユーティリティと思われる線状の物体を探すのに非常に有効な方法です。
Sensors & Softwareの地中レーダシステムは、フィールドにいながら、設定、グリッドデータ収集、データ処理、深度スライス表示の操作を行えるようガイドしてくれます。(図5)
もし、正確なGPS(誤差1m未満)を装備していて、空がよく見える開けた場所で探査をしているなら、GPSを利用してデータの位置を取得しながらラインスキャンを行い、深度スライスを作成することができます。グリッドを設定せずとも、探査エリアをジグザグに測線間隔を狭くして歩くだけでデータ収集ができます。収集データは最新のEKKO_Project V5PCソフトウェアSliceView-Line機能を使って、深度スライスに処理されます(図6)。
深度スライスは解析困難なケース「1.ターゲットが多い」には非常に有効な方法です。ターゲットを可視化して、ユーティリティの様な線状の特徴を強調するのに大いに役立ちます。
図5 グリッドでデータ収集を行うことで深度スライスが構築でき、異なる深度でユーティリティを確認できる。
複雑な現場でのユーティリティマッピングに効果的。
図6 位置情報に正確なGPSを使って疑似グリッドでデータを収集(左)。この方法でも異なる深度ごとにユーティリティを確認できる深度スライスを構築できる。
深度スライスにカラードットを重ねる:
深度スライスにはカラードットを付与したMapViewsのサポート的な使用法もあります。
MapViewを使うことによって、深度スライスには現れてこない弱い反応も、オペレータが経験と知識によりカラードットを付与して選択・表示できます。深度スライスとMapViewを同時に利用することは複雑な反応を示す探査エリアでは極めて有効です。
例えば、断面図上では目視で確認できるものでも、弱過ぎて深度スライスには表示されないものがあります(図8の赤のドット)。そういう弱い反応にカラードットを付与して、現場で直接またはEKKO_ProjectPCソフトを利用して表示させることが可能です。
色で区別する方法は様々です。飲用水と思われる反応には青、というように地下のユーティリティ別にマークする方法や、浅い所の反応は緑、中間は赤、深い所は青、というように深度別にマークする方法などです。(図9)または、反応の強弱で区別する方法もあります。区別の方法はいくらでもありますが、プロジェクトに適した方法を選択し、効果がでるまでその方法を粘り強く続けることが必要です。
図7:GPRラインにカラードットを付与。
MapViewで表示させると線状になったユーティリティ
が現れる。
図8:特徴ある反応にカラードットを付与(グリーンドット)
カラードットをマークしたら、EKKO_ProjectPCソフトを利用してMapViewを表示させます。そしてそこに表示されたカラードットのパターンを見てみます。(図9と図10)カラードットが一列に並んでいる場所であれば、線状の物体、おそらくユーティリティがあることを示しています。バラバラに存在するカラードットは、単体で存在するターゲットからの反応であり、ユーティリティ調査を行う際はあまり注目されません。
付与したカラードットと深度スライスを重ねてみることで、深度スライスに現れた強い線状の反応は、カラードットを付与した強い双曲線と同じものなのか確認することができます。(図9)そしてさらに重要なのは、深度スライスにははっきりと現れない弱い双曲線からユーティリティを検出することです。(図10)深度スライスとカラードットを併用する方法は、見逃されがちな弱い反応を検出し、複雑な探査現場を解決するのに非常に役立ちます。
安全にそしてユーティリティを破損しないことが第一条件です。
難解なユーティリティ調査に直面した時には、出せる戦略をすべて使ってそれを解決していくことです。
図9:深度スライスにユーティリティのはっきりした線状反応が見られ(上)、
カラードットを付与することで再確認できた(下)。
図10:深度スライス上にははっきりした線状反応は見られない(上)。
しかし、非常に弱い反応を含むすべての双曲線をカラードットでマークすると、
通常では見落とされがちなユーティリティが検出された(下)。
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